大学で1年の時に新歓で意気投合してライン交換していた子が、TBSのアナウンサーになってた……
何を言っているかわからねぇと思ったが、俺も何が起こったのかわからなかった。
こんなに差がつくなんて……
その話もおいおいかけたらいいと思う。
今日は社会人2年目になった僕が、就活生に伝えたいたった一つのことを話したい。
アナウンサー志望の女の子は出てくる。
吾輩は二子玉川にいた。
会社×面接×二子玉川と言ったら、ほとんどの就活生の間で答えは出ていると思う。
そのあの会社しかない。
楽天である。
余談だが、吾輩は新卒2年目だけどすでに1000万の資産を築くことに成功しました。楽天証券はひどく使いやすいでござる。
楽天の一次面接の会場には、たくさんの人がいた。当時は一次面接は3人同時に行い、その3人が誰なのかは、待っている段階でわかっていた。椅子がそれぞれのグループに分かれているからだ。
最初に座った時から、僕の隣には美人とイケメンがいるのに気が付いていた。で、その二人が話はじめたから、僕は自分の手帳を見ながら今日話すことを確認していた。まるでバチェロレッテ、第一話の杉ちゃんである。
待ち時間は、あまりにも長かった。そこで、僕は手帳をしまってころよいタイミングで会話に入った。
何を話したかは覚えていない。ただ、顔をはっきりと見た途端、思ったより美人ではないのと、思ったよりイケメンではないことに気が付いた。少なくとも、僕よりはいい見た目をしていたが。
で、そのまま3人で呼ばれて面接に行く。そのグループ面接で初めて、
隣の美女がアナウンサーを目指していたこと、地方局まで全部受けたけど、落ちてしまったこと、それでもやり切って今は後悔ないこと、を知った。
なんとなくの流れで、そのまま3人で帰った。イケメンがどんな話をしていたかは覚えていない。
アナウンサーを目指していた美女が、失敗していた経験が気になったから僕は聞いてみた。
「どうしてさ、ゼミの中で喧嘩したの?」
「あぁ、アレ?」
彼女の横顔はあまり美しくなかった。横顔より、正面の顔がきれいな人って珍しい。思い出したように美人だと思い、それを伝えたら彼女は笑った。
「ありがと」
「それで、そう、喧嘩した話よね。うん。私さ、アナウンサー目指してて、地方局とかまでインターンも全部受けてたんだけど、そうなるとね、夏休みとか春休みとか長期休みはね、結構忙しいの。全国行くから。で、法学部なんだけどゼミが結構ガチゼミで、私ゼミ長やってたんだけど、ゼミガチ勢の男の子に嫌われちゃったの。ゼミ長なのにちゃんとやらないのはどうなの? って感じで」
ゼミの男たちは陰キャなのか、と勝手に想像した。自分たちが熱心になっている学問を、美女がアナウンサーを目指すために足蹴にしているのは確かに面白くないのだろう。
「アナウンサーって、難しいんですね。Yさん美人なのに」とどうせもう会うこともないだろうし言った。
「ありがとうございます!」と彼女はお辞儀までした。そのあとで
「私、カメラ映りが悪くって」と笑った。彼女の歯は白く、行儀よく小さな口に収まっていた。
二子玉川の駅で別れた。本当はラインを聞きたかったけど、そんな勇気は当時の僕にはなかった。今もない。
そのまま、帰りの電車で彼女の名前を検索した。そして彼女と思しきFacebookのアカウントを見つけて開いて、僕は絶句したのであるーーー
【広告の下に続きます】
吾輩は絶句した。先ほどであったアナウンサー志望美女のFacebookアカウントを速攻で探して見つけたからだった。
だ、誰……?
彼女は律儀にも大学一年生のころから3年生くらいまでFacebookを更新していた。
若い読者はわからんかもしれないが、昔は高校生もfacebookを使っていたことがあるんだよ、相当限られた世代だけどな。
で、びっくりしたのは彼女の変貌具合。大学1年生から3年生まで、どんどん可愛くなっていくんですよ。
大学一年は全部ド頭に「芋」が付くような典型的な文系芋女だったんですけど、それが2年になると、俺らが大学1年のころに出会ったあんなに魅力的な先輩いや「センパイ」になって、大学3年生になるとただの美女。もうデビューしてからの深キョンか新垣結衣を見ているかのよう。ここまで出会って、駅で別れてから30分です。誰か俺を殴ってくれ。こんなこともあるから女子はちゃんとFacebookやインスタグラムのプライバシー設定をちゃんとしような。
で、気が付いたんですよ、彼女は努力で今の美しさを身に着けたんだと。思い出したんですよ、彼女の苦笑いを
「私はカメラ映りが悪いから」
なぜかわからないけど、胸が熱くなる。
後日、楽天から面接通過のお知らせが来て、2次面接に向かったんですけど、彼女のことをどこかで考えている自分がいたわけですよ。
で、早めにつきすぎて、席に座ること少々。女の子が隣に座ったのはわかったんですが、そこでなんかこのカバンどっかで見たことあるなーって思ったら……
「「あ」」
彼女でした。これほどカフェにワープしたいと思ったことは人生でないです。
面接前ということもあって、あんまり込み入った話はできませんでしたが、彼女にはもうアナウンサーになる可能性は潰えたことを教えてもらいました。
「俺が局長だったら、絶対採用するのに」というと、彼女はまた笑いました。笑顔の、口角の上がり方がすごく綺麗で、これも何かの努力の成果が見えた。気がした。
彼女は僕より先に面接に呼ばれてしまったけれど、彼女がどれだけアナウンサーになりたくて、どれだけ努力をしたかを教えてもらった。元々、写真に写る自分が嫌いで、高校の頃は鏡を見るのも嫌なくらい、自分を見るのが嫌いだったらしい。
もう本当にアナウンサーの面接やっているやつらを憎んだ。
俺の人生の中で、「理想」のためにこれほど努力できる人間は初めてみた気がしたからだ。
例えば俺は「金」のためならいくらでも努力できる。いや、いくらでもは嘘だ。俺の限界までしか努力できない。「理想」や「ありたい自分」のために、もっと言えば、未来の可能性のために、ここまで頑張れる彼女がすごいと思ったし、改めてアナウンサーというのは憧れる職業ではないんだな、とも感じだ。
以前、弘中綾香アナウンサーが「別にそこまでなりたくなかったけど、うかっちゃった(笑)」と言っていたが、たぶんそういうことなんだろう。アナウンサーみたいな職業は。なりたいなりたくないじゃなく、(数字取れるから)なるorそれ以外の大多数(なれない人)。
俺はそれまで、アナウンサーという職業を勝手に敵視していた。女の頂点みたいなやつで、散々今までいい思いしてきたんだろう、と思っていたからだ。ちょうど、オードリー若林が、「美女には冷たくすることにしてんだ」とまだM1に出てあまりたってないころのオールナイトで言っていた心境と重なる。
俺はその美女に会ってから、アナウンサーの後ろに、リクルートスーツを着た少女の屍が見えるようになった。みんな理想を目に宿し、大人社会の風に対し信念で前進し、現実の前に朽ちていった少女たちだった。
うん。俺は疲れている。
その美女に、3次面接で会うことはなかった。僕は2次面接で落ちたからだ。芥川賞作品の話であんなに盛り上がったのに落としたあのジジイ許さねぇ。
もうそろそろ新年になって、春の番組に新しいアナウンサーがにっこにこの顔で登場して松ちゃんにいじられてるの見るたびに、楽天で出会った美女のことを思い出すんだろう。
きもくてごめんな。
だから。もしこれを見ている就活生がいるなら、これだけ覚えていってくれ。
伝えたいことは一つだけだ。
ちょっとの勇気をもってライン交換しようぜ。
ちなみに、TBSのアナウンサーは元乃木坂の子と付き合った報道の後でいろいろと発覚してました。
今日もいい日になりますよう。
コメント